バニバニ黒歴史 〜 アニソンライブと禁断の秘密道具編
7年ほど前、兄の影響でアニソンライブで交流するようになった僕氏。
気の合いそうな人も沢山いて、女子もいっぱいいて、ついにぼくのターンがやってきた!と舞い上がった。
「魅力的な演奏をして皆のハートをつかむぞ!」と意気込むものの、現実はアニメの世界のように甘くない。
初心者なのに皆から歓迎されたことに気を良くしたものの、ギターを始めたばかりの中学生が張り切って学芸会に参加したようなレベルの実力しかないので、皆とのレベル差にやはり内心引け目を感じてしまう。
そんな僕氏は、ある日ものすごい武器を見つけてしまう。
手作りパンだ。
当時、100円パンが売りのチェーン店に勤めていた僕は、そこではイチから(粉から)パンを作れるようになれないことに、ちょっと悲しく思っていた。あれ、パン屋なのにパン職人になれないんだ、と。
そんなある日、TSUTAYAでちぎりパンのレシピとパン型のセットが入口近くの目立つところに置かれていた。
「こ、これは……!!」
運命的な出会いにテンションが上がり、衝動買いした。
自分で粉から手でこねてパンを作る。小1の図工の授業でさわった粘土の感覚を思い出す。自分の手で作品を作るようですごく楽しい。ハマった。
そして僕氏は、思いついてしまった。
「ライブでパンを配ろう!」
ちょうどバレンタインシーズン。サプライズでみんなにちぎりパンを配り、元々仲が良かった人にはもちろん、それまでお近づきになれなかった女子にも配り、それから一気に『◯◯パン』(僕の名前+パン)の名称で男子にも女子にも人気を博した。
他の時にはパンを販売したし、料理が上手い女子と一緒にコラボパンを販売したりもした。
売る側ってこんなに楽しいのねと思ったり。
手作りパンは初対面の人とも一瞬で仲良くなれてしまうものすごい秘密道具だった。
それまでひきこもりだった僕が、簡単に友達100人つくれてしまった。
しかし、ある葛藤も生まれた。
だんだん「次は何を作るんですか?」と期待され、「◯◯作ってください!」との熱烈なオファーを頂くようにもなった。
ある意味光栄だ。すごい笑顔で話しかけてくれるからちょっと嬉しい。
でもその頃から、ジワジワとパン作りが義務的に感じるようになってきた僕氏。
そもそも、友達と仲良くなりたくて始めたことなのだ。それ以上のところを追究しようという情熱などなかったのだ。パン屋になりたいと当時は思っていたけど、実はそうでもなかったと後々気づく。
そして、アニソンライブ自体も皆と仲良くなりたくて始めたことなのだ。
その願いはすぐ叶ってしまった。そういう輪に入って、そういう道具を使ったから、かんたんに手に入ってしまった。
でも、なんか物足りない。
かつてないほどすごい楽しいことしてるのに、なぜ?
オーディエンスでも皆とノリノリで跳びまくったり、一緒に馬鹿になって盛り上がってめちゃくちゃ楽しいことしてるのに、なぜ?
果ては、バンド組んで大好きなアニソンを何ヶ月も練習してコスプレもしてライブしたのに、ものすごい虚無感が僕氏を襲った。なぜ?
トリでかなり盛り上がった(たぶん)のに、僕氏ひとりポツンと立っていた感じだった。
コレジャナイ……決定的に何かがちがう……
皆と仲良くなろうと音楽以外でも一緒に遊んだり、一緒に食事したり、一緒に旅したりした。
でもなぜか思ったほど仲が深められない。みんな仲良くしてくれているのに、心が寂しい。
コレハナンダ?ナゼナンダ?
バンド組んでライブをやれば、もっと仲良くなれるかもしれない!と思った。実際それまでよりは皆と仲良くなれた。
でも、結果は、虚無。あの感覚、忘れられない。
その後しばらくして、僕はアニソンライブをやめた。
音楽自体もやめて、一年くらい前から読んでいたRAPTブログの有料記事に従って、信仰生活をしていくことを決意した。
その後いろいろあったけど、今再び音楽をやることにした。
今度はもう、誰かと仲良くなるためじゃない。
僕が今まで音楽やゲームやサッカーで味わってきた、たくさんの震えるほどの感動は、神様が与えてくれたものだとRAPTブログで知った。
その感動を、いや、もっと遥かにすごい感動を皆に与えられるようになりたい。そういう演奏がしたい。そういう曲が作りたい。神を見せたい。
そういう夢を抱いている今、あのときの虚無はもうない。
小細工で人の心をつかもうというズルい考えもない。ひたすら本物を身につけられるよう頑張るだけ。
ただただ純粋に大きな夢をもって、熱い気持ちを抱いて、音楽を追究すること、それが出来ることが本当に嬉しい。
夢なんて全くなかった自分が、すぐ冷める夢じゃないホンモノの夢を持てるようになった。それが本当に嬉しい。
人は、人間どうしだけで愛し合っても幸せにはなれない。神様と愛し合い、人を救うために生きてこそ幸せになれる。RAPTさんがそう教えてくれた。
神様に愛されてこそ、人は真に孤独から解放される。それは真実だ。
僕氏には今、友達はひとりもいない。
でも、もう寂しくない。
突き進むぜ!