ドッグフードはゴミ同然の肉と犬猫の死骸入り? アフィリエイターが広めた嘘と、誤解されているレンダリング・ビジネス
ドッグフードは4Dミートというゴミ同然の肉から作られているという噂を聞いたことありますか?
4Dミートとはこういうものです↓
- DEAD(屠殺以外で死んだ動物の肉)
- DISEASED(病気の動物の肉)
- DYING(死にかけの動物の肉)
- DISABLED(障害がある動物の肉)
ドッグフードはレンダリング工場というところで、畜産廃棄物、安楽死させたペットの死体や、道路で轢かれた動物の死体なども全てごちゃ混ぜにして作られると噂されています。
自分も実際に犬猫の死体がドラム缶に詰め込まれている写真や、牛の死体をミキサーに入れている写真を見て絶句しました。ヤバすぎだろと。
……でもこのパターン、どこかで見た気がする。
(これ↓)
どこの国のどこの農家かも分からない養鶏場の写真や動画を見せて、日本中のケージ飼いの養鶏場で虐待が行われていると主張する某動物愛護団体。
なんかそれと似ているぞと。
だから、ドッグフードの陰謀論もなんか胡散臭いぞ、というのが今回のお話です。
ドッグフードはゴミ同然という情報を見つけた経緯
個人的に、RAPTさんたちの飼う犬たちが好きでよくSNSで見ています。
犬は屋外で飼ってはいけないというのが常識らしいですけど、RAPTさんの犬たちは屋外ですごく健やかに育っています。
早朝のお出迎え❣️
早朝から既に元気いっぱいの犬たちです☺️✨
大歓迎してくれました✨
みんな良いお顔で私もさらに元気をもらいました🥰❣️https://t.co/CLZ6AjvnLN pic.twitter.com/EhXMptAOhI— KAWATAとNANAと犬 (@kawata_nana_dog) July 8, 2021
そして、犬たちに手羽元を食べさせると歯石がとれて綺麗になったとか、なかなか興味深い飼育方法をされてる。
「生の骨付き肉鶏肉🍗」を犬たちに食べさせることで、犬の歯石が取れ、歯が綺麗になってました❗️
🔸詳しくはこちら❣️https://t.co/V4MG7cVZep
骨付き肉をよく噛む方の歯は、歯石が取れ、真っ白になっています❗️
反対の方はまだ少し歯石が残っていますが、嬉しい変化に驚きです😳‼️#犬 #健康 #歯 pic.twitter.com/tS1UpJP8e5
— KAWATAとNANAと犬 (@kawata_nana_dog) August 22, 2020
で、たまたまこの飼育方法の発信源かなとおぼしき人のブログを発見。
獣医でも治せない犬の皮膚病を治す方法を考案したりとか、けっこうスゴイ人。
で、その人が「ドッグフードは4Dミートをレンダリング工場で犬猫の死骸も混ぜて作っているゴミ同然のエサだ、だから絶対にドッグフードをあげてはいけない」というようなことを書いていました。
その人の犬もドッグフードを食べさせたら体調が悪くなったり、糞が2~3倍も多くなったりしたそうです。
ふむ。
でも、そういえばRAPTさんの犬たちはドッグフード食べてたぞ?
それでその犬たちはすごく元気なんだけども、これいかに?
そもそもレンダリング工場とは?
「レンダリング工場」のことを調べると、「病気で死んだ家畜や安楽死させたペットの肉も混ぜてる」とかいう悪い噂ばかりが広まっている様子。
しかし、それはとんだ誤解。
レンダリング工場は別名「化製場」と言って、家畜の死体や食用にならない畜産副産物(屑肉、脂肪、内蔵、骨など)を食用・工業用の油脂に精製したり、肥料や飼料の原料を製造するところです。
牛も豚も鶏の体の半分くらいは直接食用にはできない部分です。
参考:畜産副産物の種類
それを捨てるとなると、膨大な量の廃棄物が出ます。
だから、食用にできない部分をできる限りリサイクルしようということで生まれたのが化製場というスーパーエコシステム。
ちなみに化製場で作られる原料から生まれる製品はたくさんあります。
石鹸や化粧品、肥料や飼料、皮革製品(靴とか服とか鞄とか財布とか自動車内装とか)、シャンプー、マーガリン、ラーメンスープのエキス、ゼリー、ババロア、アイスクリーム等の原材料(ゼラチン、コラーゲン)、接着剤などなど。
僕らの身の周りにあるものばかり。レンダリング、すごくないですか?
レンダリングしなくなったら文明がかなり退化するんじゃないかと思います。
個人的に面白いなと思ったのがレンダリングで生まれた石鹸の歴史。
脂肪と灰を混ぜて作られる石鹸は、なんと5000年前のシュメール人の時代からあったようです。
あとバビロニア人、エジプト人、古代ギリシア人、ローマ人も作っていたという。
ちなみに当時の石鹸は液体で泡立ちにくかったもよう。
それでも洗濯が捗っただろうな。
で、石鹸のために動物油脂をレンダリングすると肉や骨などが余るので、余ったそれらの肉や骨を肥料や飼料に利用するようになりました。
そうやってレンダリング工場が畜産廃棄物をできる限り再利用するから、公衆衛生が保たれる。
しかも、レンダリングによって製造されるいろんな工業用品があるから、さらに便利な製品が生まれる。
畜産だけでなく、もう今の社会がレンダリング工場なしには成り立たないものになっています。
ただゴミを処理するだけじゃなくて、僕らの暮らしを豊かにしてくれている。
レンダリング工場、なくなったらマズイと思います!
ドッグフードに4Dミートが使われているというのは本当なのか?
陰謀論では病死した家畜などの4Dミートというものがドッグフードに使われていると言われています。
実際のところはどうなのか?
屠畜場では屠殺して解体する前に、屠畜検査というものを行います。

一頭ごとに屠殺前、解体前、解体後の3回検査されます。
不合格になった場合、屠殺禁止・解体禁止・廃棄(全部・一部)などの処分がなされます。
つまり、病気の家畜や異常がある肉は屠畜場で排除されます。
じゃあ、その病気の家畜や異常がある肉はいったいどこで処分されるのか?
神奈川県の食肉衛生検査所に問い合わせたところ、こんな返信を頂きました。
〈お問い合わせ内容〉
生体検査、解体前検査、解体後検査で不合格になった家畜は、化製場でレンダリングされますか?
それとも全て焼却して廃棄されますか?
〈回答〉
と畜場法に基づくと畜検査(生体・解体前・解体後検査)において不合格となった獣畜については、以下のとおりとなります。
生体検査で不合格となった場合、とさつはせず、と畜申請者に持ち帰りを指示します。
解体前検査及び解体後検査で不合格となった獣畜、枝肉、内臓等は、化製原料又は廃棄物として産業廃棄物処理業の許可を有する施設に引き渡されます。
どうやら一部は化製原料にされているようですね。
つまり、4Dミートと言われる
- DEAD「死亡した動物の肉」
- DISEASED「病気だった動物の肉」
- DYING(死にかけの動物の肉)
- DISABLED「障害があった動物の肉」
これらは実際にドッグフードに使われている可能性が高いということになります。
なんだと!?
と思ったかもしれませんが、
高温・高圧で殺菌して油脂やミールなどが作られるので、安全性は高いと思われます。
ちなみに4Dミートを使うと言っても、伝染病などのヤバそうな病気にかかった家畜はレンダリングされずに焼却・埋却されます。
家畜伝染病予防法に基づく焼却、埋却及び消毒の方法に関する留意事項
ドッグフードに詳しい人も、ミールは栄養価は低いけど安全性については問題ないと言っています。
なので4Dミートが使われているからといって、安全性は心配しなくても大丈夫です。
ドッグフードに犬猫の死骸が使われているというのは本当なのか?
4Dミートより問題なのは、犬猫などのペットの肉をドッグフードに使用しているのかという点です。
犬猫の死骸をレンダリングしているという根拠の一つとして、かつてこのようなニュースがありました。
徳島市などが業者への委託を中止 県は陳謝 /徳島[毎日新聞/徳島2月22日]
徳島市、鳴門市、佐那河内村が、路上などで死んだ犬猫の死がいの処理を一般廃棄物処理の認可のない徳島市内の肉骨粉加工業者に委託していた問題で、県は21日開かれた県議会同和・人権・環境対策特別委で、廃棄物処理を適正に行う責任者として陳謝し、同3市村が既にこの業者への委託を中止したことを報告した。
山田豊委員(共産)の質問に、上野秀樹・廃棄物対策課長と橋本保久企画監が答えた。上野課長は、「これまで相当期間、自治体が業者に委託しており、動物愛護法と廃棄物処理法のどちらで解釈するか問題だったが、(一般廃棄物で扱うべきとの)国の解釈が示された。これを契機に、市町村での適正な処理が行われるよう指導したい」と答弁。
また、橋本企画監は3市村が認可を持つ業者の委託先を探していることも報告した。
【鈴木健太郎】
これは氷山の一角で、他所でも行われているんじゃないかと噂されています。
全国の路上の動物の死骸をレンダリング業者が処理してるはずだ! それがドッグフード(ペットフード)に使われているんだ!と。
しかしそもそもですが、レンダリングできる動物は牛、馬、豚、めん羊、山羊、魚介類、鳥類のみと法律で決まっています。
出典:化製場等に関する法律
しかし、ペットフード用肉骨粉だけは使用できる動物が増え、平成 26 年 4 月 1 日の時点で下記の動物が使用できます。

この中の「その他の食用非反すう哺乳動物」に犬猫が含まれると思われるかもしれませんが、定められた収集先がカット場等とあります。肉などをカットする工場のことです。
日本において犬猫は食用ではないし、食用に犬猫をカットする工場なんて聞いたことありません。
じゃあ上のニュースの「犬猫の死がいの処理を徳島市内の肉骨粉加工業者に委託していた」っていうのはどういうことだ?という疑問が残ります。
そもそも「肉骨粉加工業者」というのは俗称で、正式には化製場(レンダリング工場)のことです。
化製場は「死亡獣畜取扱場」としての役割もあり、死体の解体とその後の埋却や焼却を行うこともあります。
なので上のニュースは、単に犬猫の死骸の焼却処理を任されただけかもしれません。
それに、犬猫の処分は普通、保健所や動物愛護センターや環境事業センターなどで行われることがほとんどです。
なので、犬猫の死骸がレンダリングされていることは基本的に無いと思って大丈夫です。
ただ、とある犬ブログにてとある読者が「とある工場で大量のネズミ・犬・猫等をペットフードの原料とするため、下処理として大きな釜で茹でていた」という投稿をしていました。
その話を真に受けていいものか疑問ですが、もしかしたら一部には本当にそういうことをする悪徳業者もいるのかもしれません。
あるいは海外のレンダリング業者のことを言っているのかもしれません。
しかし、日本の全てのレンダリング業者が犬猫の死骸をドッグフードにしているというのは悪質なデマだと言えます。
ドッグフードの品質はどうなのか?
ここまで、レンダリング自体は悪いものではないということを書いてきました。
がしかし。それによって作られたドッグフードが犬たちにとって良質な食べ物かどうかはまた別の話です。
基本的に食材というのは、加工すればするほど栄養価が減ります。高温で処理すればなおさら。
上のほうでも書きましたけど、「ドッグフードを食べさせたら体調が悪くなり、糞が2~3倍も多くなった」という人がいました。
良質なドッグフードは肉など栄養価が高く消化しやすいものが多く使われていますが、安価なドッグフードは低品質な穀物がたくさん入っています。
そういう安価なドッグフードは消化に悪く、糞の量が増えてしまうようです。
参考:速報…週刊新潮「食べてはいけないペットフード」 (2)
こちらのサイトの方は実際に良質なドッグフードを作ろうとされている方ですが、安価なドッグフードの原料は、カサ増し目的で人間が食べないようなゴミ同然の穀物(未成熟な穀物や、酷いものだと虫が湧いたような穀物)を使っているものも多いと言っていました。
90分くらいあるかなり真面目な動画で、とても勉強になります。
ドッグフードに限らずペットフード全般、このような品質の悪い商品は多いようです。
とある猫缶メーカーの営業はこんなことを言っています。
「人間の鰹ダシの商品を出しているんですが、そのダシを取った鰹節を猫用の缶詰の工場に回すんです。
栄養?そんなん無いですよ。だいぶ圧搾かけてますから、ただのカスです。産業廃棄物ですよ。」
そもそもペットフードというのは、製粉業者が穀物のカスを利用してドッグフードにしたのが始まりだそうです。
ゴミとして捨てるしかないものをカネにする方法を見つけた。それがペットフードの始まり。
こちらは栄養損失の少ない製法の海外の工場と、栄養損失の多い日本で一番売れている日本初のドッグフードのビタワンを作っている工場の動画です。(ビタワン工場風景は8:49以降)
これを見ると、できる限り安く大量生産をしているドッグフードは、やはり栄養損失の多い製造工程になっています。
じゃあ高価なドッグフードは大丈夫なのか?
ネットを見ると、4Dミートの話をして市販のドッグフードは危険だと煽って、高価なドッグフードを勧めるサイトがあります。
で、そういうサイトはアフィリエイト目的のものが多く、だいたいどのサイトも同じようなドッグフードを勧めています。
つまりステマです。それらの高価なドッグフードは利益率が高く、アフィリエイターに人気です。
おすすめランキングとか書いてるサイトはだいたいそれ。
そのアフィリエイター自身が高い報酬を貰えるランキングでしかない。
なのでその高価なドッグフードが本当に品質の良いものだとは限りません。
ドッグフードに詳しいこの動画の方は、良質なドッグフードをネットで探すのは難しいと言っています。
そしてそもそも、最適な給餌量も栄養価も犬によって違うと他の動画で言っておられました。
だから、飼い主はものすごく勉強しないといけないと。ごもっとも。
安易に市販のドッグフードやアフィリエイターを信用せず、自分が真剣に勉強して騙されないようにしないといけないですね。
さいごに
レンダリング工場という存在を自分も今回初めて知りましたが、ぜんぜん悪いものではなくて社会に必要なものだと分かりました。
そして良いドッグフードもあれば悪いドッグフードもあることも分かりました。
うちでは昔ジリスを飼っていましたが、エサに無頓着だったためか、2匹とも病気で苦しんで死んでいきました。
ペットフードを作る企業はビジネスでやっています。
良心的な企業もありますが、全ての企業が本当に良いものを作っているわけではないというのが現実です。
だから飼い主が責任をもって真剣に勉強して、自分のペットの個性や体質も理解して飼育してあげないといけない。
適当な気持ちで飼ってたら大切なペットが不幸になります。
どうせ飼うなら全力で幸せにしてあげたいですね。
じゃないと、適当にやった分だけどこかで不幸にさせてしまうから。
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